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福祉情報にたずさわって20余年に思うこと 北翔大学 林恭裕

 いよいよ3月に大学教員生活を終えることになり、資料等を整理していると、私が福祉情報に関わることになった北海道INS情報委員会の資料が出てきた。北海道は、1988年から1997年までの戦略プロジェクト(北海道新長期総合計画)の一つとして医療福祉INS構想を位置付けていた。その具体的な事業として、1995年4月に北海道は、北海道社会福祉協議会に保健福祉情報システムとしての北海道INS情報センターを委託した。私は、その情報センターの部長として立ち上げから運営までかかわることになり、それが福祉情報化への端緒となった。北海道の取り組みは、先行していた東京都福祉情報システム(東京都社会福祉協議会)、愛知福祉情報システム(愛知県社会福祉協議会)(に次いでのもので、当時東京都社会福祉協議会の担当職員であった故森本さんには、ずいぶんお世話になったことが思い出される。

 

 当時は、都道府県社会福祉協議会で福祉情報化の取り組みが活発で、全国社会福祉協議会も全国福祉情報セミナーなどを開催していた。しかし、現在は、そうした取り組みも途絶えたままである。 

 

 北海道INS情報センターは、通信ネットワークとコンピュータを結びつけ、北海道の広域性による情報の遠近格差を解消し、道民や福祉団体に必要な福祉情報を提供することを目的に設置されたが、わずか4年で幕を閉じた。データーベースに情報を蓄積し、専用の通信回線を使って端末から情報を閲覧するというシステムは、通信料金の負担、端末のコスト、情報の更新コストの問題があり、利用が伸びなかったことが直接の要因であったが、当時劇的に発達したインターネットの普及とウインドウズ95によるパソコンの使い勝手の向上により、情報を入手する方法としての容易さとコストの面で北海道INS情報センターのシステムが一気に陳腐化したことも大きな要因であった。

 

 あれから20数年が経過するが、果たして福祉情報は、道民のもとに届いているのだろうか。相談支援機関は、効率用よく情報を収集し、個別性の高い福祉・介護の相談を行っているのだろうか。よく聞くのは、ケアマネジャーなどの相談にあたる専門職の力量の格差である。最近も、回復期病院の退院を迫られた人の相談を受けることがあったが、医療ソーシャルワーカーがその病院にいながら情報が不十分なため、家族が苦労している、というケースであった。インターネットが発達し、多様な福祉や医療に関する情報サイトが生まれているが、福祉・介護は非常に個別性が高いので、そこにある情報がどういう意味を持つのかという、それぞれのケースに応じた解釈(個別性)が必要になることを思うと、道民一人ひとりが、インターネットにある公私の情報を探し、選択し、解釈するということはなかなか容易ではないと思われる。そこに、相談援助職による支援が必要と思われるが、相談支援機関にどのような情報ネットワークが構築されているか、相談援助職は、業務の中でどのように情報を活用しているのか、ということが改めて福祉情報化の課題としてとりあげることがひつようではないか、と思う。